あと少しで入賞のときは、人のオールインへのコールを絞ればいいの?
答えはこうです。入賞の直前は、人のオールインにコールする手を、序盤より絞ります。
序盤なら迷わずコールする手でも、入賞の直前(「バブル」)では 降りる ことがあります。
チップが無くなって大会から抜けることを「飛ぶ」と言います。入賞の直前にコールして負けると、あと少しのところで飛んで、何ももらえずに終わります。
チップを2倍にしても、賞金の見込みは2倍にならないの?
なりません。チップを全部取って優勝しても、もらえるのは「1位の賞金」までです。チップを増やしても、それ以上は増えません。一方で、チップを失えば何ももらえない順位まで落ちます。だから 増える分より、減る分の方が重い のです。
くわしい数字の例は、下の「読みたい人向け」にあります。
自分からオールインするときも、同じなの?
いちばん厳しくなるのは コールする側 です。オールインした側は、相手が降りればポットを取れます。
自分がチップリーダー(チップが一番多い人)になったら、どう戦えばいいの?
チップが一番多いときは、次の3つです。
- 降りやすい相手に圧をかける:チップが少ない人や、入賞まで待ちたい中くらいの人は、飛びたくないので降りやすい相手です。こういう相手には、オープンや3ベットを 増やして ポットを奪いに行きます
- ほかの大きいスタックとの無理な勝負は避ける:自分のチップを大きく減らせるのは、同じくらいチップを持つ人だけです。はったりや圧の相手には選びません。ただし、強い手なら受けて立ちます
- 全部のポットを取りに行かず、場面を選ぶ。でも固くなりすぎない:チップを守ろうとして何もしないのも、ミスです
入賞の直前、チップが中くらいのときは、自分から入る手も絞るの?
絞ります。チップリーダー(その卓でいちばんチップの多い人)ではない、中くらいの人は、自分から最初に入る手も、人のオープンに続ける手も、序盤より絞ります。 とくに、チップリーダーが自分より後ろにいるときです。
入賞の直前、チップがとても少ないときは、自分からオールインするの?
します。チップがとても少ない(おおむね15BB 以下)人は、入賞の直前でも、入るなら自分から先にオールイン します。反対に、人のオールインにはコールしません。
入賞が決まったあとも、コールは絞ったままなの?
いいえ。入賞が決まったら、入賞の直前ほどは絞りません。 レッスン4の表(賞金を考えずにチップで数えた表)の考えに戻します。
ただし、賞金が大きく上がる順位の手前(とくに最後の1卓の手前)では、また絞る向き になります。
何を覚えればいいの? 丸暗記でいいの?
基本は丸暗記でいい です。まず覚えるのは2つ。
- 入賞の直前は、人のオールインへのコールを、序盤より絞る。
- 持っているチップは、これから勝つチップより重い(増やすより、失わないことを先に考える)
チップの量と、入賞が決まったあとで変わる所が3つあります。
- 中くらいの人は、入賞の直前は自分から入る手も、人のオープンに続ける手も絞る。
- とても少ない人は、入賞の直前でも、入るなら自分から先にオールイン。人のオールインにはコールしない。
- 入賞が決まったら、絞りを戻す。賞金が大きく上がる順位の手前で、また絞る。
自分がチップリーダーのときは、ここを覚えます。
- チップリーダーは、降りやすい相手(チップが少ない人・中くらいの人)に圧をかけ、ほかの大きいスタックとの無理な勝負は避ける。場面は選ぶが、固くなりすぎない。
どれくらい絞るかの数字は覚えなくていいです。「絞る」「戻す」という向きだけ覚えてください。
読みたい人向け:なぜこの基準なの? 出典は?
チップの価値は、どうやって決めるの?
- トーナメントの賞金は順位で決まります。それぞれのチップの量が、残りの賞金のうち どれだけの見込みになるか を出す考え方を ICM(Independent Chip Model)と呼びます [P31][PB9]
- ICM の計算では、自分が1位になる確率を「自分のチップ ÷ 全員のチップ」とし、2位以下も同じように、残った人のチップの割合で順番の確率を出して、賞金をかけて足します [P31]
- リングゲームのチップはお金そのものなので、この考え方は当てはまりません [P9]
数字で見ると、どれくらい違うの?
Wikipedia の ICM の例です [P31]。
| 条件 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 残り3人のチップの割合 | A 50%・B 30%・C 20% | [P31] |
| 賞金 | 1位 70・2位 30・3位 0(3人のうち2人が入賞) | [P31] |
| A の賞金の見込み(ICM) | 約45(チップの割合どおりなら 50 なので、その約90%) | [P31] |
| B・C の賞金の見込み(ICM) | B 約32・C 約22(チップの割合どおりの額より多い) | [P31] |
この数字から、A のチップの重さをくらべます [P31]。
| A のチップ | 賞金の見込み | 変わる額 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 50(今) | 約45 | ― | [P31] |
| 100(全部取って優勝) | 70(1位の賞金) | +約25 | [P31](引き算はこの教材) |
| 0(全部失って3位) | 0 | −約45 | [P31](引き算はこの教材) |
- 同じ 50 のチップでも、勝って増える分は約25、負けて失う分は約45。持っているチップの方が、これから勝つチップより重いことが、数字で分かります [P31]
- PokerSkill の説明も同じで、「チップを2倍にしても、賞金の見込みが2倍になることはめったにない。だから、これから勝つかもしれないチップは、すでに持っているチップより価値が低い」としています [PB9]
- この例の賞金は「3人のうち2人が入賞」で、3位は 0 です。つまり 入賞の直前(バブル) の形そのものです [P31]
入賞の直前で、なぜコールが厳しくなるの?
- 入賞の直前では、飛ぶ危険をいちばん負うのはコールする側 です。だから、コールには序盤より高い勝率が要ります [PB9]
- 段階3で学んだ「必要勝率」(チップだけで見たときに、コールしてよい勝率の線)に、さらに上乗せが要るということです。この上乗せを「リスクプレミアム」と呼びます [PB9]
- 序盤に 60BB で明らかに良いオールインが、入賞の直前では「降りる」になりえます [PB9]
- 上乗せがどれくらいかは、チップの量や賞金の分け方で変わります。この教材では数字(ICM の表)は使わず、「表よりコールを絞る」向きだけで判断します((出典なし)この教材の決め方・定義ノートの BL-1520 ⑤)
チップリーダーは、なぜ圧をかけて、ほかの大きいスタックを避けるの?
- PokerStrategy の用語集は、チップリーダーの戦い方を「場面を慎重に選ぶ。全部のポットを取ろうとしない」「生き残る圧を受けている、チップの少ない人と中くらいの人を狙う」「ほかの大きいスタックとの要らない勝負を避ける」とまとめています [P37]
- PokerSkill の用語集は、チップリーダーは自分がカバーしている(自分よりチップの少ない)相手より、1チップあたりの失う重さが小さいので、奪いに行くオープンと3ベットを広げられる、としています。そして「卓が圧をかけてほしがっているのに、圧をかけない」のが、いちばん多い見えないミスだとしています [P38]
- PokerNews の記事も、大きいスタックの強みは「チップの少ない人に圧をかけ、押し込めること」で、チップの少ない人は降りやすいとしています [P39]
- 同じ記事は、自分が築いた大きいチップを大きく減らせる相手は「はったりや圧の相手の上位に置くべきではない」としつつ、「ほかの大きいスタックをいつも避ければいいわけではない」(強い手では受けて立つ)とも書いています。大きいスタックで固く守るのは「いちばん得なやり方ではない」としています [P39]
- 判定クイズでは「圧をかける相手はどっち(チップの少ない人/同じくらい多い人)」の向きだけを問います((出典なし)この教材の決め方・定義ノートの 3-3)
中くらいの人は、なぜ自分から入る手も絞るの?
- PokerSkill の用語集は、入賞の直前の中くらいの人について「オープンを絞り、際どい3ベットの打ち合いを避け、チップの少ない人が先に飛ぶのを待つ」としています [PB9]
- 中くらいの人が、自分より多くのチップを持っている(自分を「カバーしている」)チップリーダーにコールで全部のチップを入れるのは、よくあるミスです。チップの少ない人が先に飛ぶのを待てるからです [P38]
- 判定クイズでは「広げる?絞る?」の向きだけを問います((出典なし)この教材の決め方・定義ノートの 3-4③)
チップがとても少ない人は、なぜ自分から先にオールインするの?
- 同じ用語集は、チップの少ない人は「オールインか降りるか。ただしオールインに寄せる」としています [PB9]
- 自分からオールインすれば、相手が降りてくれる道が残ります。人のオールインにコールすると、その道を捨てて、入賞の直前でいちばん厳しい形の勝負になります [PB9]
- 判定クイズでは「先にオールイン/人のオールインにコール」のどちらが良いかの向きだけを問います((出典なし)この教材の決め方・定義ノートの 3-4④)
入賞が決まったあとは、なぜ絞りを戻すの?
- 入賞の直前を過ぎたら、すぐに広げるのが正しく、まだ絞ったままの相手にはとくに広げます [P38]
- 圧(ICM の重さ)は、賞金が大きく上がる順位の手前で強くなり、そこを過ぎると弱まり、次の段差の手前でまた強くなります [P38][PB9]
- 最後の1卓の手前は、入賞の直前と同じ形で、賞金の段差がもっと大きくなります [P43]
- どれくらい戻すか・絞るかの数字は使わず、向きだけで判断します((出典なし)この教材の決め方・定義ノートの 3-4⑤・BL-1520 ⑤)
コラム|ICM の元は、競馬の計算
大会のチップを賞金の価値に直す ICM(独立チップモデル)は、デビッド・ハービルが1973年に書いた競馬の論文の計算が元で、1987年にメイソン・マルムースがポーカーのために別に見つけ直した、とされています。そのため「マルムース=ハービル法」とも呼ばれます。全員の腕前が同じくらいと考え、いまのチップの量だけで順位の確率を出すのが特徴です。馬の着順の計算が、バブルでのあなたの手を止めている、と思うと少しおかしな話です [C19]







